こんにちは
アシスト・ジャパン株式会社 東京営業部 警備業担当のAです。
アシスト・ジャパンではイベントスタッフだけではなく、花火大会や展示会などの警備を担っており、
ときに施設警備を請け負うこともございます。
イベント警備も百戦錬磨のアシスト・ジャパンをどうぞよろしくお願いします。
そしてこの記事を書く私は施設警備担当です。
せっかくアシスト・ジャパンの公式Webサイトをご覧の皆様に、本記事では、警備実務で重要な「不審物の一次判断」について、ひとつ知識として持ち帰っていただければと思います。
「不審物」とは何か
突然ですが、「不審物」って、どんな物を指すと思いますか?
これは不審物でしょうか。
じゃあ、これは?
でも、これは? 写っているものは同じです。
こんなことを訊かれても困ってしまいますよね。
実は、現役の警備員でもはっきりと答えを持っている方はそう多くありません。
同じ物であっても、「置かれた状況」次第で意味は変わります。
そして現場では、この判断を迷わず行う必要があります。
不審物の見分け方として、イギリスで広く用いられているのが「HOT」プロトコルです。
HOTとは、以下3点で一次評価する考え方です。
| H = Hidden | 隠されているか | 意図的に視界から外されている配置か |
| O = Obviously suspicious | 明らかに不自然か | 構造・外観に異常があるか |
| T = Typical | その場所に通常ある物か | ここに存在する理由を説明できるか |
これらを総称して「HOT」と呼称します。
イギリスのNaCTSO(国家テロ対策セキュリティオフィス)が考案し、イギリスの警備業では一般的なプロトコル(手順)となりました。
元々日本含めた諸国では不審物の見分け方についてある程度体系化されていますが、
イギリスは2005年、「ロンドン同時爆破事件」を経験しており、そこからより発展的に・なおかつわかりやすい形でまとまったものです。
警備・フィジカルセキュリティの文脈でHOT Protocolについて触れたWeb上の日本語記事は、(2026年2月現在)検索する限り見つかりませんでした。もしかしたら、日本語でHOTプロトコルを体系的に解説する記事は、本記事が日本初かもしれません。
写真: “Russell square police road.JPG” by FrancisTyers, licensed under CC BY-SA 3.0
元ファイル:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Russell_square_police_road.JPG
圧力鍋は「場所」で意味が変わる
端的に言えば、次のいずれかに該当する場合は「不審物として扱う」判断になります。
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目立たないように隠されている
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配線、基板、電池、テープ、パテ状物質など、外観に不自然さがある
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油染み、粉末の付着、液漏れ、異臭など、通常と異なる兆候がある
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その場所にあって自然と説明できない(場所との整合性がない)
重要なのは、3つ全てが揃うのを待たないことです。
一つでも該当すれば、現場は「危ないものかも」と警戒します。
例として出した画像ですが、圧力鍋もキッチンにあれば不自然ではありません。
じゃあこれが、公園にあったら?
圧力鍋は、キッチンにあれば不自然ではありません。
一方、公園の通路脇に置かれていれば「Typical(その場所に通常ある物)」とは言えません。つまり、一次判断としては「不審物として扱う」対象となります。
実際、2013年のボストンマラソン爆弾事件では、圧力鍋を用いた即席爆発装置(IED)が使用されたことが報じられています。
だから圧力鍋自体が危険という話ではありません。問題は「場所と状況の不整合」です。
不審物は爆発物に限らない
不審物の想定は爆発物だけではありません。
2001年には、アメリカで粉末を封入した郵便物による炭疽菌事件が発生し、人的被害が出ています。
郵便物・配達物で注意すべき兆候としては、次のようなものがあります。
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過剰なテープ止め、二重封筒、形状の不自然さ
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粉末の付着、液漏れ、油染み
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サイズに対して不自然に重い
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異臭がする
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宛名・差出人情報が不自然、脅迫文言がある
ただし、現場ではこの「典型」から外れる事案もあります。
私が過去に警備をした案件で、実際に経験した例です。
宛名は正しく、差出人情報も実在する住所でした。
しかし、こちらに全く心当たりのない差出人から、当時の警備請負先の代表取締役宛に荷物が届きました。
「身元は一応整っているが、意図が不明」という状態です。この時点で、安易に開封してよい類ではありません。
当該施設にはX線検査装置があったため、手順どおり検査を実施しました。
結果は想定外でした。爬虫類専門店から送られてきた、生き餌のゴ○○リが数十匹。X線上ではそれがはっきり写っていました。
このケースは爆発物でも生物剤でもありません。
しかし重要なのは、「宛名と住所が実在する」ことは安全の根拠にならない、という点です。
そして、迷ったときに判断を個人の勘に寄せず、設備と手順に乗せて切り分けたことが、結果的にリスクをゼロにしたという事実です。
郵便物は「Typical」に見えやすい分、HOTだけで片付かない領域です。
だからこそ、不審な郵便物や小包は別プロトコルとして、隔離・未開封・報告・検査という手順を持っておく必要もあります。
まとめ
このように、不審物や不審郵便は「典型」だけでは判断できません。
大切なのは、危険物を見抜くことではなく、危険かもしれないものに対して”触らない・拡げない・独断で処理しない”という標準動作を徹底することです。
HOTは、放置物を見た瞬間に判断を整理するための枠組みです。
郵便物は別途、不審郵便の手順として隔離と報告、可能であれば検査に回す。
この二段構えにより、初めて施設の安全が守られます。
以前、とある県警察で署長まで務められた業界の大先輩から、こう教わりました。
「大きく捉えて、小さくまとめる。結果として人命を守れることが最も大切」
この言葉は、今も私の施設警備における判断基準の根幹となっています。
施設警備もアシスト・ジャパンで!
アシスト・ジャパンでは、花火大会や展示会などのイベント警備に加え、施設警備の立ち上げもサポートいたします。
HOTプロトコルのような実務的な判断基準の導入や、現場が迷わず動ける体制づくりもお手伝いいたします。
警備体制や運用面で気になる点がありましたら、公式サイトのお問い合わせ窓口よりお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

